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太原別墅の全景
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上海のオールドホテルを大きく分類すると、元がマンションやアパートなど比較的高層の建築で、それをホテルに改装した場合と、個人の住宅や別荘だった洋館をホテルに改装した2種類に分けられる。今回の太原別墅はその中でも後者にあたるといえよう。フランス洋館風の太原別墅は気品溢れる風格を今でも伝えており、政府要人が貸し切で使うため、時には予約が難しいホテルの一つでもある。
この太原別墅は、徐家匯区の旧フランス租界地エリアの中に位置する。といっても、木々に囲まれていて、筆者もこの通りの前をよく歩くのに、ここにこんなロマン溢れる洋館が建っているとは思いもしなかった。外からはまったく見えない。それでだけに、さまざまな「神秘性」を秘めた洋館として語り次がれている。
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歴史があるだけに、堀の深い表情をしている
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太原別墅のことを、人によっては上海でもっとも豪華な洋館であると形容する人もいる。建築されたのは1928年ごろ。フランス人のある凄腕の弁護士が自宅用として建築した。1930年代前後といえば、オールド上海の黄金時代で、世界中の金持ちがこの上海に投資し、各国の租界地には豪邸が建設された。
この弁護士について、多くの資料が残されていないが、ただどんな裁判でも必ず勝訴してくるといわれ、フランス租界の中でも特に弁護料が高いことから「強盗弁護士」と呼ばれていたそうだ。彼の背景には、フランス駐上海総領事やフランス公蕫局など、いわゆる政府関係者と密接な関係をもっていたことは確かで、それが、彼の弁護士としての成功をサポートしていたものと思われる。
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フランス式の建築様式
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太原別墅の庭園面積8780平方メートル、延べ床面積2050平方メートル。南側のテラスには広々とした緑の芝が広がる。建物の配置も非常に余裕があり、門から玄関までのアプローチも長い。上海の中心部に、個人でこれほどの豪邸が建てられるのだから、このフランス人弁護士の富がいかに莫大であったことが想像できる。さらに、建物全体はフランスルネッサンス様式の宮殿を模し、多くの装飾建材はフランスから直輸入されたそうだ。
その後、太平洋戦争が勃発、この弁護士も病死し、その妻を通じで中国人に売り渡される。そして戦争終了後、軍に没収されることになる。
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スイートルームの書斎
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1945年に当寺の米国大統領トルーマンの特使として、米国陸軍のGeorge
Marshallが上海にやってくる。そのときに滞在したのがこの太原別墅で、いまだに太原別墅はMarshall
Residenceと呼ばれる。上海人もこの太原別墅のことを「馬歇尓(Marshall)公館」と呼んでいた。今でも当時の面影が残る2階の書斎で、広々とした芝生の庭園を眺めながらMarshallは執務を行ったそうだ。部屋には明・清代の古い家具が配置され、さらに書庫には重要な政治関係の書類が整理されていたという。
その当時、共産党と国民党は上海で何度も談判を繰り返していたものの、いずれも成果を挙げることが出来ず、1946年11月に決裂、翌年1月7日に特使だったMarshallも上海をあとにしている。
上海解放後、太原別墅は上海市の招待所に指定される。文化大革命の時代、毛沢東の夫人、江青がこの太原別墅に密かに宿泊したことがあったそうだ。江青の宿泊に関しては一切秘密にされていたが、彼女が宿泊するとき、付近の住民は一切物音を立ててはいけなかったそうだ。文化大革命後、この謎の宿泊者の正体は、実は江青であったことが明らかになったというエピソードが残っている。
(左)ヨーロッパ調でまとめられている (右)一般の客室
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重厚な玄関部分
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太原別墅では、現在でもその当時の姿を非常に美しく残している。入り口を入った奥には大きな暖炉が残されている。エントランスのホールから階段を上ると、さらに大きなホールに入る。その昔、このホールには大きなシャンデリアが設置されていたそうだ。
その右手奥から美しい螺旋状の階段が各階へとアプローチされている。この螺旋階段も太原別墅の特色の一つ。その造形美をじっくりと鑑賞したいところだ。
(左)エントランスホールにある暖炉 暖炉に火があれば最高なんだが (右)太原別墅で有名な螺旋階段
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ダイニングにある仕切り戸の絵は絶品
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1階に入って左側にはヨーロッパ風のダイニングルームがある。ちょうど真ん中に可動式の間仕切りがあるが、そこに描かれている『三国志演義』と『紅楼夢』の情景画は見逃せない。フランス様式の建物とは言え、中国的様式もふんだんに取り入れられているところが上海らしい。
螺旋階段を2階へのぼると、スイート・ルームがある。高い天井が印象的で、広いバルコニーに出ることができる。まるで社長室を思わせるような立派な机は、風格たっぷりだ。そして、忘れてはならないのが広いバスタブ。実は、太原別墅が完成した当初も、モザイクタイルが美しく張られたバス・ルームは有名で、さすがに現在は改装されているものの、その広さが当時を髣髴させる。
(左)なかなかゴージャスなスイートルームのバスルーム (右)スイートルームの前に広がるテラス
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徐家匯の真ん中なのにこの庭の広さ
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現在は、瑞金賓館分館の太原別墅として、一般の利用客も宿泊することができる。もちろん、Marshall
たちが使った2階のスイート・ルームも、宿泊可能だ。そのほか、広い芝生の庭園を利用してパーティーや結婚式も行われるようだ。ただ、市政府関係の行事などで使われることが多いので、予約するときには注意が必要。
なお、太原別墅の敷地内に、別館として屋内プールやフィットネスクラブ、サービス式アパートメントの施設も持つ。上海の繁華街に近いロケーションだけに、交通の便なども比較的よいといえる。
(山之内 淳:中医ドットコム)
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