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Root No.7
馬場道
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今月は租界時代の洋風建物が林立する馬場道の異国情緒溢れる町並みをご紹介。今回ばかりは人々と自転車が四方八方に行き交う天津の雑踏から離れ、歩いた道には花が咲くと言われている天津マドモアゼルこと私けようが閑静な通りを優雅な気分で歩いて…ってめちゃくちゃ寒いっちゅーねん!耳ちぎれるっちゅーねん!鼻水が勝手に垂れてくるっちゅーねん!天津のここ数日の最低気温は−5度前後。そぞろ歩きに出かけたこの日も、快晴とはいえ吐く息も凍る氷点下の世界。ええいままよ、今回はマドモアゼルの異名をかなぐり捨てて、初冬の馬場道を鼻水すすりながらそぞろ歩いてみました。ズズーッ。
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旧租界
馬場道は南京路の東端から南西方向へななめに伸びている道で、前回紹介した八里台の交差点から東へ伸びる囲堤道との交差点まで続きます(正確には囲堤道との交差点を越えて南下し、自然博物館の側まで続きます)。
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旧租界として有名な馬場道。戦前はこの道を挟んで北西側にイギリス租界(1903年設置)、南東側にドイツ租界(1901年設置)が置かれていました。現在でも、馬場道には租界時代の趣を匂わす瀟洒な洋風建築がそこここに残されており、エキゾチックな雰囲気を漂わせています。馬場道という名前の由来はこの近くのイギリス租界に競馬場があったためと言われています。馬場道のどの辺りに競馬場があったのか定かではありませんが、当時この道のどこかで競馬が行われ、それに興じるイギリス人たちでにぎわっていたのでしょう。
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それでは馬場道の様子を南京路側から詳しく眺めていきしょう。下の写真は南京路との交差点から少し歩いて南京路側に向かって撮ったものです。向かって右側にそびえるビルは天津の凱旋門ことその名も「凱旋門大厦」。居住施設があり、ここに住んでいる日本人も多いと聞いています。もちろんフランスの凱旋門を真似て造ったから「凱旋門大厦」なんです。なんで凱旋門なのかはわかりません。もしエッフェル塔だったら中に人が住みにくいからだと私は思います。それから、この中には「凱旋門百貨」というスーパーがあります。こちらでお買い物する時はぜひフランス語で。ヴァン・ド・プリムール・シルヴブレ(ヌーボーワインください)。
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馬場道周辺は公衆トイレがけっこう多い
さて180度向きを変えてみましょう。南京路を背に立つと左手に真新しい高層ビルが見えます。世界貿易センタービルです。そう2年前にテロリストが突っ込んだ。違います。突っ込んでいません。こちらは「天津国際経済貿易中心」、通称ICTC(International Commercial Trade Center)と呼ばれる建物です。やっぱり貿易系だったんだ。つい最近できたばかりのようで中はほとんど真っ暗。ですがいずれ天津の経済を象徴するようなビルになるかもしれません。
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天津の貿易センタービル
続いての写真はICTCの真正面。天津のビッグベンです。左手がマンハッタンなら右手はロンドンか。東武ワールドスクエアもびっくりです。ところでこの時計台の柱に書かれている「五大道」とはこの辺りにある有名な5本の通りのことで、馬場道・睦南道・大理道・常徳道・重慶道を指すそうです。馬場道を最南端に睦南道以下4本の道がこの順番で平行に伸びています。どの道も馬場道に勝るとも劣らない雰囲気のよい通りですので、また回を改めてご紹介できればと思います。
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町並みと調和してる?
旧租界の瀟洒な町並みを紹介するつもりがずいぶん違う方向へ脱線してしまいました、スミマセン。まあ馬場道の風景はおおよそ赤レンガの古い建物、凝った造りの門、白壁に這うツタの葉、左右に並ぶ大きな街路樹(冬の今はすっかり葉を落としてしまいました)、アンティークな街灯で構成されています。それに天津人の足である自転車、ピカピカの自動車、エアコンの室外機なんかがミックスされて、異国情緒という言葉だけでは言い表せない天津独特の雰囲気を醸しています。古いものと新しいもの、きれいなものと汚いもの、相反するものが同居している馬場道の町並み。ここに立つと、租界時代から開放後の今日に至るまでの天津史の縮図を見ているような、そんな気がしてきます。
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路上駐車が多い。で、けっこうきれいな車ばっかり
イギリス租界の建物
こちらは天津外国語学院。旧「工商学院主楼」
「ブルジョワジーのほのかな腐臭」
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変わりオブジェ
馬場道を語るにあたって無視できないのが、道端のそこここに置かれているオブジェ。石膏風のものからブロンズ風のものまでさまざまです。おそらく旧租界の雰囲気に調和させるように造られたのでしょうが、何か違うんだよな〜、というものがたくさんあります。そんな変わりオブジェたちを、ここにいくつか紹介しましょう。
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なんだか風景と合ってないぞ
馬場道だけに馬のオブジェが多い
こちらも馬
上の写真の背景にご注目。建物の取り壊し作業をしています。建設ラッシュの天津では老朽化した建物をどんどん取り壊して道路を広げたり、高層ビルを建てたりしています。また馬場道のような旧租界地では古い建物を壊してまたレンガ造りの建物を建てているところがあります。たとい前と同じように造ったとしても、決して元と同じにはならない。一度壊してしまったものは元には戻らないのです。町の発展の上ではやむを得ないことなのかもしれませんが、一つまた一つと歴史が消えていくのを見るにつけ、いちまつの寂しさを感じないではいられません。
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半壊した建物。こうなったら瓦礫といっしょ
荷物をまとめて出て行く老夫婦。どこへ行く?
深夜に馬車のオブジェの上で語り合う
ちょっといい雰囲気のオヤジ2人組
「ゲマインシャフトとホモ」
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尻割れズボン
馬場道の瀟洒な町並みがそうさせるのか、そこに暮らす人々もまた、ほかの通りに暮らす人々と違って、どことなく清閑な雰囲気を漂わせているような気がします。道端のところどころにある木製のベンチに若者やお年寄りが腰掛けて談笑したり、ただぼうっと景色を眺めたりしています。垂れた鼻水が凍りそうなくらい寒かったこの日でも、ベンチにじっと座って日向ぼっこをしているおじいちゃんがいました。このおじいちゃん、ビクとも動きません。実は凍りついているんじゃないのか?ちょっと気になりましたが、ヘタをするとこっちが凍りついてしまいそうだったので足早に通過しました。
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ほんとに全然動かないんだよ!
老人の次は子ども。まだ歩くのもおぼつかないような子どもが、これまた足下のおぼつかないおじいちゃんといっしょに散歩していました。こういうのはたいていおじいちゃんが嫁に内緒で勝手に連れ出しているパターンです。で、あとで嫁に見つかって怒られるわけです。おじいちゃん、孫がカワイイのはわかるけどくれぐれも気を付けてね。しかしまあ手をつないで微笑ましい光景です。
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老人と子どものほのぼの風景
それはさておき、子どものお尻の部分をご覧ください。割れてます。お尻はもとから割れてますが、そうじゃなくて、ズボンが割れています。尻割れズボン、中国にちょっと詳しい方ならたいていご存じと思います。これは赤ちゃんがいつでもどこでもズボンを汚さずに用を足せるように、股の部分をわざと開けてあるんです。オムツが普及した今ではあまり見かけなくなりましたが、それでも時々このズボンを穿いている子どもを見かけます。しかし鼻水も凍る(ってしつこいな)ほどの寒さの中、お尻丸出しではスースーしてかなわんだろうと思います。と言うより、この寒さでは痛いだろうと余計な心配をしてしまいます。
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「馬場でケツとはこはいかに?」
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次回はパラダイスの宝庫・水上公園を歩く予定です。
だからといって面白いことをあまり期待しないでください。
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Illust & Text by KEYOU...
http://keyou.at.infoseek.co.jp/
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