「天津日報大厦」に背を向けてしばらく歩いていくと、左手に「天津市二手房交易中心」という建物がありました(写真)。「二手」とは「二」番目に「手」に渡るもの、つまり中古品のことです。こちらは中古の部屋(アパート、マンション)を取引するためのセンターです。
ご存じの通り、数年前から中国全体が不動産購入ブームに沸き立っており、天津も例外ではありません。私の友人や同僚たちも、弱冠20代半ばにして30万元、40万元のマンションを購入している者がゴロゴロおります。30万元と言ったら彼らの月給のおよそ200倍。給料まるまるローン返済につぎ込んでも15年以上かかります。生活しながら返済する場合、完済できるのはいつになるんでしょうか。また、中国では土地の私的所有権は認められておらず、不動産を購入したと言っても70年の借地権を得たに過ぎません。汗水流して働いてローンを完済したところでその数年後には国家に返却、「拆」されても文句も言えないのです。それでもなお冷めやらない不動産購入ブーム。職場の日常の話題は、若者ばかりが集まっているにもかかわらず、好いた惚れたの恋愛話ではなく、不動産の話。やれあそこのマンションが買いどきだ、やれ郊外に新築マンションを購入した、最上階だ、頭金はもう払った、でも工事が中断して再開する目途が立たない(※)…などの話題で盛り上がっています。※中国では、マンションの完成・引渡しの前に決済するのが一般的で、日本と逆です。
これほどの不動産ブームなら、こちらの「天津市二手房交易中心」もさぞかし活況だろうと思われる方も多いでしょうが、今はまだそうでもない、と私は思います。一概には言えませんが、中国の人は新品好きで、中古品を嫌います。コンピュータも必ず新品を購入し、中古品はよほどのことがなければ買いません。ましてや日々生活する家です。購入するなら絶対に新築でしょう。ですが、もう数年もすれば、ブームに乗じて購入したマンションを移転など諸事情で手放さざるを得なくなる人も増えるかもしれません。その時に、この中古取引センターが必要とされるのではないでしょうか。
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