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Root No.23
囲堤道

先月号で「今年の天津はあまり暑くない」などと書きましたが大ウソでしたゴメンナサイ! 原稿を書き終えた翌週くらいから連日「最高気温>体温」という猛暑が続いております。しかも日差しの照り付けるジリジリとした暑さではなく、湿気を帯びた熱気が体中にまとわりつき、まあ例えて言うなら四方からエアコンの室外機の生ぬるい風を浴びているような、或いは四方を力士に囲まれながらギュウギュウ詰めのエレベータに乗っているような、ムンムンとした暑さです。じっとしていても全身から玉の汗がブワーッ。ちょっとでも動こうものなら頭のてっぺんからナイヤガラ。鼻の毛穴も開きっぱなしです。ファンデーションのノリが悪いったらありません。せっかく塗った日焼け止めクリームも汗に混ざって流れ落ちて行きます。とはいえ能天気に紫外線を浴びてはいられない年齢なので、サファリ帽を深めに被った怪しいいでたちでそぞろ歩いてまいりました。今月は「囲堤道」です。

囲堤道とは

「囲堤道」は天津市街地の南東側を東西に伸びている大通りです。東は大沽南路と交わる「南楼」から、西は馬場道と交わる「{イ冬}楼」(以下「冬」を代用)まで。「南楼」以東は「新囲堤道」、「冬楼」以西は「呉家{穴かんむり+缶}大街」とそれぞれ名前を変えます。「南楼」も「冬楼」もスーパーや外食産業が集中する繁華街です。また、囲堤道の北側には人民公園、南側には天津随一の遊園地「楽園」があります。今回は「南楼」から西へ向かって歩くことにしました。

「南楼」とは囲堤道と大沽南路の交差点一帯の繁華街のことですが、そこのシンボルタワーと言えるのが同交差点南東角に立っている「天津日報大厦」です(写真)。「天津日報大厦」は、天津で発行されている日刊紙で天津市共産党委員会の機関紙でもある「天津日報」の発行元である天津日報社のオフィスです。中国ではお馴染みの全面緑のガラス張り、すそ広がりのずっしりとしたボディ、つるんとした球形のヘッド、そして天に向かってまっすぐ伸びたアンテナで、存在感をアピールしています。上の地図をご覧の通り、囲堤道は大沽南路の交差点から少し北側へそれるため、囲堤道側から見ると「天津日報大厦」がまるで道をさえぎってど真ん中に立っているような錯覚を覚えます。よそ見をしながら車を運転していると、天津日報大厦に突っ込んで記者に事故現場を捉えた大スクープ記事を書かれかねませんのでドライバーの皆さんは注意が必要です(そんなわけねーだろ!と、さまぁ〜ず三村風の突っ込みを入れてください)。

「天津日報大厦」に背を向けてしばらく歩いていくと、左手に「天津市二手房交易中心」という建物がありました(写真)。「二手」とは「二」番目に「手」に渡るもの、つまり中古品のことです。こちらは中古の部屋(アパート、マンション)を取引するためのセンターです。

ご存じの通り、数年前から中国全体が不動産購入ブームに沸き立っており、天津も例外ではありません。私の友人や同僚たちも、弱冠20代半ばにして30万元、40万元のマンションを購入している者がゴロゴロおります。30万元と言ったら彼らの月給のおよそ200倍。給料まるまるローン返済につぎ込んでも15年以上かかります。生活しながら返済する場合、完済できるのはいつになるんでしょうか。また、中国では土地の私的所有権は認められておらず、不動産を購入したと言っても70年の借地権を得たに過ぎません。汗水流して働いてローンを完済したところでその数年後には国家に返却、「拆」されても文句も言えないのです。それでもなお冷めやらない不動産購入ブーム。職場の日常の話題は、若者ばかりが集まっているにもかかわらず、好いた惚れたの恋愛話ではなく、不動産の話。やれあそこのマンションが買いどきだ、やれ郊外に新築マンションを購入した、最上階だ、頭金はもう払った、でも工事が中断して再開する目途が立たない(※)…などの話題で盛り上がっています。※中国では、マンションの完成・引渡しの前に決済するのが一般的で、日本と逆です。

これほどの不動産ブームなら、こちらの「天津市二手房交易中心」もさぞかし活況だろうと思われる方も多いでしょうが、今はまだそうでもない、と私は思います。一概には言えませんが、中国の人は新品好きで、中古品を嫌います。コンピュータも必ず新品を購入し、中古品はよほどのことがなければ買いません。ましてや日々生活する家です。購入するなら絶対に新築でしょう。ですが、もう数年もすれば、ブームに乗じて購入したマンションを移転など諸事情で手放さざるを得なくなる人も増えるかもしれません。その時に、この中古取引センターが必要とされるのではないでしょうか。

バス停の前を通りかかったときにふと思い立ってシャッターを切りました。フロントガラス向かって左下の部分をご覧ください。水色のステッカーが貼ってあり、1.50元と書いてあります。これまで特殊なバス(長距離路線)を除いては一律1元を貫いてきた天津市バスが、今年6月1日より値上げされて1.50元になりました。小銭を用意するのが面倒なので、バスカードを利用する人が増えています。私も中国人の同僚に頼んでバスカードを買ってきてもらいました。さっそく使ってみようとカード片手に勇んで乗り込んだまではよかったのですが、そのバスにまだカード読取機が設置されていなくて、慌てて財布の中から小銭を探す羽目に。カードがあるからといって安心できません。以来そんな時のために普段から小銭を持ち歩くようにしています。

葉っぱの形をした、ちょっと面白いオブジェがあるなあと思って近づいてよく見てみると、「社会の公共道徳を遵守し、市の景観と環境を保護しよう」とありました。その上に落書きがされているのが痛々しいです。

一昨年の夏この連載を始めたばかりの頃にイラストで紹介した夏のおばさんファッションを、今回写真で紹介します。自転車が人々の重要な足であるここ天津では、夏場の紫外線対策が女性の大きな悩みとなっています。スカーフで頭からすっぽり覆ったり(左写真)、特大サンバイザーをかぶったり(右写真)と対策はいろいろです。帽子のように髪がつぶれることもなく、顔面の日差しをシャットアウトしてくれる特大サンバイザーは確かに機能的と言えますが、見た目はガッチャマン、ダースベーダ−のようでもあり、ファッションとしてはちょっといただけません。それに黒のコーティングがあるからといって、紫外線カットの加工がされている保証はどこにもありません。興味本位で買ってみようと露店で立ち止まって、思い止まりました。

すみません、こういうのを見るとついシャッターを切ってしまいます。友誼路との交差点で、この辺りには銀行が犇きあっているので「友誼路金融街」と名付けられたのだと思います。犇く…牛…

囲堤道の西の端、「冬楼」に到着。ゆっくり歩いたので40分ほどかかりました。「冬楼」は前述した通り、囲堤道と馬場道の交差点一帯の繁華街です。南西角に語学書を多数置く「外文書店」、対角の北東角にマクドナルド、台湾系イタ飯屋「ジノベーカリー」、韓国系ファミレス「地中海」などが林立していて、大変活況があります。マクドナルドの前によく子犬の露店が出ていますが、狂犬病予防はされていないので、かわいいからと言って安易に触れてはいけません。また、写真右の高層ビルにはケンタッキー、それから洋菓子・パン販売のチェーン店「聖西林」があります。こちらの「聖西林」、テーブル席がいくつかあるのですが、椅子がなく、代わりにブランコが天井から釣り下がっています。ブランコに揺られながら恋人と語らう…なんてロマンチックなんでしょう(そんなヤツいねーよ!と三村風の突っ込みを入れてください)。ちなみにブランコで思いっきり遊ぶと後ろのお客様の迷惑になりますのでやらないでくださいね(そんなヤツ絶対いねーよ!もう一度三村風に)。


とんぱ日本出張中
こう見えてホワイトカラー

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Illust & Text by KEYOU... http://keyou.at.infoseek.co.jp/

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