馬場の柵の内側に乗馬教室の生徒さんを乗せるための馬たちが待機しています。この馬たちは初心者でも安心して乗れるようしっかり調教された大人しい性格の馬ばかりです。
柵の外側、写真右側にいる赤い鞍をつけた黒毛の馬にご注目。この黒馬は、スーザンさんが8月に自ら内モンゴルまで買い付けに行って買ってきた馬です。前述した通りこの日はこの馬の初調教日でした。内モンゴルからやって来たばかりのこの馬は、柵の内側の馬たちに比べて体がほっそりしています。ひがな一日内モンゴルの草ばかりをはんで育ったためです。これからここの農場で1日3食の飼料をモリモリと食べれば数週間で他の馬たちと同じようなガッチリとした体つきに変わるだろう、と農場のスタッフが言っていました。
スーザンさんによる黒馬の初調教が始まりました。黒馬につないだロープの端をスーザンさんが持って、もう一方の手に持った鞭で叩きながら馬に指示を出します。見たところなかなか素直な馬のようで、スーザンさんの指示に従ってゆっくり歩いたり、止まったり、駆け足になったりしていました。でも、ご褒美のニンジンをスーザンさんの手から食べようとはしませんでした。人の手から食べ物をもらって食べるという習慣がないのですから、それも仕方ありません。これから調教を重ねていくことによって、黒馬もここでの生活に慣れ、スーザンさんや農場のスタッフたちとの距離が縮まっていくのでしょう。この馬がこれからどのように人を乗せられる馬へと成長していくのか楽しみです。
新参の馬の調教が済んで、いよいよ乗馬教室の時間です。本日の3名の受講生のみなさんは一週間前に基礎を勉強しており、農場のスタッフが見守る前で難なく馬上にまたがり、ゆっくり並足を始めました。わたくしも挑戦…と思いましたが、前日にお腹をこわして体調が回復していなかったのと、学生時代に小豆島(二十四の瞳で有名な)で観光用の馬から落馬しかけて以来トラウマになっているので、柵の外から大人しく見学です。当初の運動不足解消の目的は完全に私の頭から飛んでいます。
スーザンさんの指導もいいのでしょうが、受講生のみなさんはどなたも初心者とは思えないほどしっかり馬に乗っていました。馬にまたがったまま立ち上がったり座ったり、または馬上でのけぞって馬のお尻を触ったり前かがみになって馬の頭を触ったり、ということまでやっていました。時々馬から下りて休憩しながらも、時間があると、もう一回乗ってもいいですか、と盛んに練習していました。
自分よりもはるかに大きい動物の背中に乗って、それをコントロールしながら歩いたり走ったりするのは、だれしも最初は怖いものです。その恐怖感は大切で、常に持っていてほしい、とスーザンさんは言います。馬に乗る以上はやはり怪我をする危険は常に付きまとっているので、ちょっと怖いと思うくらいの緊張感を持ちながら馬に乗ってほしいということです。恐怖感、緊張感を超えた先に馬との一体感や乗馬の楽しさがあるのでしょう。そしてそれは当然のことながら馬に乗った人にしか得られないもの。楽しそうに馬に乗っているみなさんの姿が、柵の外から眺めているわたしに羨ましく映りました。今度また体調が万全な時にチャレンジしてみたいと思いました。
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