TOP/ 連載TOP/Profile & 目次 |
Root No.29
瀋陽道
前回はヨン様も乗ったリンカーンリムジンの話に脱線しましたので、今回は基本に戻って、しっかり自分の足でそぞろ歩いてきました(脱線したほうがおもしろいという意見もあるみたいですが…)。第29回目の天津そぞろある記は、骨董とガラクタの宝庫「瀋陽道」です。 いきなり余談ですが、「瀋陽道」の「瀋」の簡体字(中国大陸で使われている漢字)は「沈」と書きます。ついでに言うと、沈む、沈没の「沈」の簡体字は「沈」ではなくて「さんずい+冗」。同じ漢字の国と思って安心しているととんだ誤解を生じかねないので注意が必要です。中国人で「沈」という姓の人がいますが、この場合日本語では「チンさん」ではなく「シンさん」と呼ぶのが正しいでしょう。…なんて偉そうに言っていますが、わたくし自身つい最近まで知らなかったんですねえ。 閑話休題。「瀋陽道」とは一体どんな通りでしょうか? 瀋陽道はとても小さな通りですが骨董市で有名なので、この名前を知っている、またはこの道を訪れたことがある、という日本人も少なくないと思います。 ではまず位置から説明しましょう。天津市のほぼ中央に位置する和平区の中心部分、南京路以北一帯は、碁盤の目を45度傾けたような形で小さな道が短い間隔で格子状に伸びており、けっこう入り組んでいます。しかもこの「45度傾けた」というところがポイントで、都市全体としての区画整備が行われたことのない天津では、この格子状に交わる通りが東西南北を全く無視しています。ここでは便宜上、北東と南西を結ぶ道を南北方向と捉えて「縦の道」、北西と南東を結ぶ道を東西方向と捉えて「横の道」と呼ばせていただきます。縦の道には「濱江道」「万全道」「鞍山道」などが、横の道には「山西路」「河北路」「和平路」などがあります。「瀋陽道」は縦の道で、「濱江道」(Root No.03)と「万全道」(Root No.17)の間に位置し、その範囲は「南京路」との交差点から「海河」(川の名前)沿いの「張自忠路」との交差点までです。 |
瀋陽道と南京路の交差点付近。
南京路脇に高くそびえるこの建物が目印だが、
わたくしが天津に来た5年前からずっとこの状態。
建設中なのか解体中なのかも不明…
瀋陽道に一歩足を踏み入れると
50年前にタイムスリップしたような
古い下町の様相を呈している
赤黒いレンガ造りの一般住宅の中に
ちらほら租界時代の名残と言える洋風建築が
見られるのも天津ならでは
万全道と同様、下町の瀋陽道には人々の生活があり
小売店や露店商が軒を連ねて活気が溢れている
写真は、今が旬のパイナップルと甘蔗(サトウキビ)
|
天津瀋陽道古物市場
瀋陽道と言えばやはり「天津瀋陽道古物市場」です。その名の通り、中国の骨董品を売る店や露店商がずらりと並ぶ骨董市場です。骨董と言っても、恐らく本当に骨董としての価値のあるものはひと握りで、ほとんどの品がちょっとレアなガラクタでしょう。骨董品のコレクターの方のみならず、ちょっと中国のおもしろいものが見てみたいという方の暇つぶしにはもってこいの場所です。古物市場の所在地は下図の通りです。 |
骨董売り場は横の山東路も含めて十字になっていますが、基本的には縦の瀋陽道1本の通りを指すようです。南側の熱河路の交差点と、北側の新華路の交差点に「天津瀋陽道古物市場」と書かれた看板が掲げられています。新華路側のほうがしっかりした門構えなのでこちら側が正門なのでしょうが、今回はアクセスの都合から、熱河路側より進入してみました。 |
熱河路交差点の門(看板が手書きでしょぼい…)。
門の下では、青い鳥打帽をかぶったひょうきんなおじいさんが
小さな店を広げて盛んに客引きをしていた
実際に足を止めて物珍しげに眺める客も少なくない
この古物市場の中で最も賑わいを見せるスポットは、中央の山東路との交差点付近。この辺りには、清代のずっしりとした調度品を多数取り揃えている家具屋さんや、アンティークな蓄音機やアコーディオン、一体誰が使うのか大きな銅鑼(ドラ)、弦のブチブチ切れた琵琶などの古楽器を店内に所狭しと並べている店などが目立ちます。また、明らかに外国人観光客を意識した品揃えとディスプレイのお店もあり、そこで立ち止まってデジカメなんかを構えていると、店のオヤジが「コンニチワ!」と遠巻きに叫んでこちらの注意を促してきたりします。 |
瀋陽道×山東路の南西角にあるアンティークショップ
その名も…「文革専売古物店」
古い電気スタンドやランプ、扇風機、レコードプレイヤーなど。
まさか当時の紅衛兵の押収品ではないと思うが…
かわって南東角のお店、こちらも負けてはいません。
仏像やら絵画やら出自の怪しい骨董品から、
ヒョウタンの飾り物やおじいちゃんの杖など
骨董というよりただただ古いだけの商品がずらり!
やはりここにも毛沢東主席グッズが。
真っ赤な丸いプレート(巨大バッジ?)には
「永遠忠于毛主席」(永遠に毛主席に忠誠だ)とある
コインもいろいろ。
「楊貴妃」「西施」など中国4大美人をあしらったものから、
民国時代のもの、海外のものまで
真贋は別にして、眺めているだけでもおもしろい
店側の販売意欲がまったく感じられない、
100%ガラクタと言ってよい品々。
万に一度くらいは掘り出し物もあるかもしれない
はたしてこれも売りものなのか?!
雨ざらし、埃まみれの木製マージャン牌。
汚れやひび割れで相手の牌が読めてしまって
きっとゲームにならないこと請け合い!!
|
★作者へのお便りはこちらから。
Illust and Text by KEYOU...http://keyou.at.infoseek.co.jp/
Copyright(C) since 1998 Shanghai Explorer