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中国の温泉を体験して
〜浙江省武義天然温泉〜


後ろに見える建物が宿泊施設(休憩室から)


 最近、上海人の間で温泉が秘かなブームになっている。その証拠に、旅行会社に行くと1泊二日程度で、上海近郊の温泉地にいくツアーがいくつも販売されている。その中でも、今回は実際に浙江省武義の温泉に出かけるチャンスがあったので、ご紹介しよう。

 浙江省武義は上海から約460キロのところにある。高速道路でほぼ直結されているので、車を使えば5時間ぐらいでいける。近郊といっても中国は広いから、これぐらいはすぐにかかってしまう。

 よく間違えられるのが福建省の武夷。発音がほぼ同じだから無理もない。いずれにしろ、温州、義烏、金華、杭州、寧波、上海などとは高速道路で直結しているため、便利になったことを実感する。特に、上海と杭州を結ぶ瀘杭高速道路は浙江省エリアではほぼ完全に8車線の道路が続く。まさに、長江デルタ地区の大動脈といっても過言ではない。山のない上海にすむ上海人にとって、車で3時間〜5時間でいける浙江省は格好の休暇地なのである。


温泉山荘 施設は丘の上にあります

 武義は通称、「温泉之城」と呼ばれるぐらい、温泉で有名。1日に沸いて出る温泉の量は4000トン、温度は41.2℃〜51℃程度の硫化水素泉と表記されている。マイカーがあれば、温泉めぐりをしてみるのもいいかもしれない。武義には代表的な温泉エリアが集中していて、有名なのでは今回筆者がでかけた武義温泉山荘のほかにも、武義清水湾レジャー村、武義渓里温泉浴●(=口ヘンに巴)の3箇所が有名だ。

 武義温泉山荘をまたの名を「唐風風呂」と呼んでいる。もともとは山荘のあった宿泊施設に露天風呂を併設した形になっている。「唐風風呂」は2005年10月1日に1500万元を投資して開業した温泉施設で、比較的あたらしい。そもそもは、富裕層の個人客を相手に温泉施設を開放する予定だったようだが、思ったほど客が集まらず、施設を売り飛ばす話さえ出ていたという。しかし、利用料金団体向けに一気に100元以下に落としたところ、これが当たり、週末や連休になると上海などからどっと観光客が押し寄せるようになった。しかし一般客が利用する場合は、今でも100元から128元の入浴料がとられる。

 
(左)唐風温泉へのアプローチ   (右)唐風温泉入り口 なかなかおしゃれ

 週末や連休ははっきりいって行かないほうがいい。団体客が押し寄せてすごいことになっている。中国語では「下餃子」という。すなわち、水餃子を鍋にいれたときのような状態で、日本語では「芋の子を洗う」のような混雑とでも言おうか。 混雑しているときはロッカールームに入るにも大変で、入れたとしてもツアー客なら1つのロッカーを数人で共有するほどの有様だ。しかし、一般に平日は比較的空いているようだ。


温泉に入っている人たち(休憩室から)

 入り口に番台があり、その左・右から脱衣場に入る仕組みは、日本の温泉施設と似ている。木部を多用した施設といい、きっと日本の温泉施設を参考にして設計されたのだろう。
 浴場は男女混浴なので、もちろん水着着用で温泉に入らなければならない。温泉施設はすべて露天風呂で、一部屋根がつけられている部分もあった。薬草風呂や酒湯、岩風呂、足浴、滝風呂などがある。中心部分に大きな浴槽があり、これはまるでプール。杭州の西湖をイメージしているらしい。大小いろいろな露天風呂の浴槽を合わせると全部で20ほどになるようだ。

 バスタオルとスリッパに履き替えて浴場へ出る。風呂にはいるというより、泳ぎに行くという感じだ。事実、大浴槽では泳いでいる人も多数見かけた。髪の毛を束ねないで、頭まで浸かって泳いでいる女性にはちょっと閉口。
 それもそのはずで、大浴槽の水深はけっこうあり、普通に座るだけでも頭まで水に漬かってしまう。パンフレットなどを見ても、浮き輪で遊んでいる人の写真が掲載されていたので、真ん中の大浴場は遊ぶためのものか。薬草風呂など趣向をこらした風呂は、大浴場を囲むように設置されている。

 温度もぬるすぎることなく、この日は人が多くて、ちょっとお湯が汚く感じた意外は、結構快適にお湯につかれた。ただ、文化の違いで、そもそもまだ中国人の間では日本人のように温泉に入る情緒を楽しもうという楽しみ方が違う。そのあたりは、中国の他の温泉地へいっても同じであろう。逆に、日本にくる中国の人には、日本での温泉の入り方のルールをまずしっかりと知ってもらう必要がある。
 ちなみに、ここでは温泉に入ったら後は更衣室内のシャワーで体を洗うことになる。このあたりもプールに入る感覚だ。


 各露天風呂には、係員がしっかりとついていて、目を光らせている。持ってきたタオルは、浴場のそばにある棚に置くことになるが、どれも同じタオルなので、気がついたらなくなってしまうので、注意が必要。露天風呂内にはスタンドがあり、喉が渇いたら、飲み物が無料で供給される。ちなみに温泉の中での撮影は厳禁。

 気になる温泉の質だが、この唐風風呂では源泉は敷地内丘にある深さ363.53メートルの地下から汲み上げられているという。水質は透明で、基本的に無色無臭だった。ただ、お湯につかるとちょっとぬめりがある。この温泉施設の隣には、3星クラスのホテルも設置されているが、こちらは各客室に温泉が通っていて、蛇口をひねるとお湯がでるらしい。というのも、このホテルに宿泊するのが大変で、宿泊するために「ダフ屋」を通さないといけないこともあるらしく、とても筆者のような個人旅行客が泊まれるようなところではない。この日もフロントで聞いてみたら、満室だった。


武義のシンボル、熟渓橋

 武義まできたら、ついでに800年(南宋時代)の歴史をもつ熟渓橋を見ておこう。この橋は、2001年の台風で流されたものの、再び部材をかき集めて精巧に修復された木造の橋で、市街地中心部に位置する。浙江省指定の文化財でもある。武義のシンボルであり、あたりは公園として整備されている。

 杭州あたりにお住まいなら、武義までは来るまで2時間ほどでいけるので、平日の人の少ないときに温泉というのもいいかもしれない。上海からのツアー客が来られない時間帯、すなわち朝晩なら人は少ないそうだ。しかし、上海からわざわざ5時間もかけていくにはちょっと手をこまねいてしまう。

 
(左)夕暮れの浙江省武義
(右)このあたりで売られている小吃です。焼餅と現地の人は呼んでいました。中に ちょっと辛く味付けされた豚肉が野菜とブレンドされて入っています。 パリパリの皮といいなかなか美味!

 日本だったらほんの1〜2時間で風情あふれる温泉に出かけられることを思うと、日本人は恵まれているなあ、と改めて実感してしまう。しかし、経済の発展にしたがって、中国人のレジャーのあり方も、単なる観光地をまわるだけのものから、休暇滞在型へと急速に変化しつつあることは確かだ。
 今回の教訓は、中国で本当に休養するには、やはりそれ相応のお金をしっかりと出さないといけない、ということか。それでもそんな情緒ある温泉地が中国に本当にあるのだろうか?またのチャンスにレポートしてみたい。

(2006年5月記・山之内 淳


武義唐風露天温泉度假村

電話:0579−7620666
HP:http://www.tangfengwq.com/


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