私はバザールを歩いていました。この街のバザールにはパキスタン、トルコなどから渡って来た商品がずらりと並び、国籍不明の不思議な雰囲気が漂います。
この時私はチャドルで顔を覆っている女性をカメラに収めたいなぁと考えながら歩いていました。「いい被写体はないか」と油断なく周りを見回している私は姑息な侵入者でした。
彼女はバザールの一角に座っていた小さな老女でした。チャドルに覆われた顔は瞳しか見えないにもかかわらず、そこには人を圧倒させる存在感がありました。事前にウイグルに関する様々なレポートを読んで、すっかり彼らの事が分かった気になっている自分を見透かされているような気がしました。
私は素直にその存在感にひれ伏し、さっきとは違った気持ちでシャッターを切ったのです。
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