先日、とあるお仕事で虹口区の里弄(リーロン)と呼ばれる路地へ何度か足を運びました。四川路から魯迅公園まで一帯は旧日本人租界区だったエリアで、以前は高級アパートだったのでしょう、しっかりしたレンガ造りの建造物群は外から見るだけでも人々をノスタルジックな気分にさせます。解放後は1棟に数世帯が同居し、改装や増築もされて、ドアの向こうには一体何世帯がどういう暮らしをしているのか、私はいつも中を見てみたい衝動に駆られるのです。
この縦横無尽に広がる里弄(リーロン)、どうせならいろいろな角度から撮ってやろうと、脚立を背負って行った私はどこからどう見ても異様な姿の外来者でした。
そんな私に、犬を連れたおじさんが話しかけてきました。
「おい、お前何しているんだい?脚立なんか持ってどうするんだ?」
「里弄(リーロン)の写真をいろいろな角度から撮りたいの。出来れば一番てっぺんに登って上から撮りたいんだけどねぇ」
「俺んちは上の階だけど、今は人に貸しちゃったから見せられないなぁ」
「じゃあ、おじさんはどこに住んでいるの?」
「俺かい?俺は今部屋なしさ!屋上に住んでんだよ。屋上に」
「???」「見たいのか?」「もちろん!」
私とおじさんは中に入って行きました。(つづく)
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