濱江道北側の道幅はそれほど広くなく、両サイドに青々とした街路樹、その緑の影に小ぢんまりとした商店が立ち並んでいて、南側のがやがやとした雰囲気と好対照をなしています。黒と白のサインポールが回っている理髪店、窓から飲料や駄菓子などを売っている小店、「五金」という看板を出している金物屋、貸衣装でスターみたいな写真を撮ってくれる変身写真館などいろいろあり、店構えは繁華街のそばだけあって、まあまあ小ぎれいです。が、特に目を引くようなものは見当たりません。わざわざ道の端っこから歩いて失敗、メインの歩行者天国だけぷらぷら歩いて帰ればよかったなあと後悔し始めた頃、あるものが目に留まりました。
それは三輪車。と言っても、日本の幼稚園児が乗るようなシロモノではありません。幅80センチ×長さ120センチくらいの荷台が付いた中国式三輪車です。ある者はスイカなどの青果物を積んで、ある者は石灰の白い粉を山積みにして、またある者はおじいちゃんやおばあちゃんを乗せて…と、いろいろな用途に使える万能な乗り物です。住んでいる地域がディープなせいもありますが、私はこの三輪車を1日に1台は見かけます。ひょっとしたら中国で自転車の次に普及している人力車輌なのではないでしょうか。
中国式三輪車にはいろいろな種類があるようですが、最もよく見かけるのが赤と黒のベッコウ風のまだら模様をあしらったタイプ。ちょっと毒々しい感じがしないでもないですが、たくさん出回っているところを見ると、中国の人々には受け入れられているのでしょう。それとも見た目とは全く関係ない部分で特別に優れた点があるのかもしれません。ともかく、このベッコウ風三輪車を頻繁に見かけるので、そのたびに「どこで売っているんだろう?」と気になっていたのでした。
それが濱江道北側のこんな目立たない場所にあったなんて! そこは比較的大きなサイクルショップで、全面ガラス貼り、中には格好いいマウンテンバイクからバッテリー式の電動自転車まで、さまざまな自転車が並んでいました。気になる三輪車は店の入口の前に止まっていました。もちろん傷ひとつない新品で、赤と黒の毒々しい光沢を放っています。「やっと出会えた…」まるで運命の恋人に巡り合ったような気分で恍惚と三輪車を眺めていると、店内から老板のするどい視線が…。慌てて写真を撮ってから、そそくさとその場を離れました。